月夜に狩る人、喘ぐ人。-14

リカコ、お子様ランチのプレートに盛られたハンバーグに泣きながらナイフを入れる。おまけについてきたクマの人形がリカコを見つめている。

 

「あたし。助けられなかった」

 

リカコ、ハンバーグをさいの目に切り刻み、鼻をすすりながら半口分だけ口に運ぶ。

 

「あたし、ほんとになんにもできなかった」

「助けられなかったって、誰を助けられなかったんだ?」

 

ハーバート、おとなしく自分の席に着いてリカコにたずねる。目の前には料理ひとつない。ハーバート、指を鳴らす。

 

「汁粉だ、汁粉持ってこい」

 

サメの背びれがテーブルの上に現れる。サメはテーブルの一部をその背びれで四角く切り取っていく。そしてその四角い空洞から、汁粉の入った椀が飛び出てくる。

 

「ご苦労!」

 

ハーバート、椀をひっつかみ、豪快に汁粉を飲む。リカコはリカコで、ぼろぼろに崩したハンバーグをちまちまと食べている。

 

「……あたしのひいお婆ちゃん、」

「婆ちゃん?」

「そう。フィオナ婆ちゃん。あたしの目の前でぶっ倒れて死んじゃった」

「お前が幾つんときだ」

「4つか5つ。たぶん、心臓発作。ハービーさん、救急車って知ってる?」

「ルボール星人をなめんなよ」

「じゃ、知ってるってことね。で。そう。あたしの親が救急車呼んだんだけど、あとで親に【ダメだった】って言われた。あたし、その意味がわかんなくて、子ども心ながらにぼんやり布団のなかで考えてた。でもやっぱり、そのときはわかんなかった」