月夜に狩る人、喘ぐ人。-20

「けっ。何なんだあいつは。イケメンだからってこの場の雰囲気を全部持っていきやがって」

 

ハーバート、前歯に挟まったパセリの小さな茎を気にしながら、ぶつぶつと文句を言う。

リカコ、いまだ頬を赤らめて放心中。

 

「おいストライピー、」

 

リカコ、反応しない。

 

「おいストライピー!」

 

リカコ、2度目でようやくハッと我に返る。

 

「なーに赤い顔してんだ?さてはあのイケメンに一目惚れだな?奥方がいると言ってたじゃないかアイツは。ゆえにお前の出る幕、なし」

 

リカコ、首を繰り返し大きく横に振る。

 

「そんなんじゃないわ。でも、…少しくらい、いいじゃない」

「いいじゃないって何がだよ」

「だからその、ステキな人を見てステキだなって思うことくらい、いいでしょって」

「そりゃそうだ、そんなのは別に構わん。いやむしろ、お前にはそれくらい夢中になることがあったほうが良かろう、食い物以外にな」

「あたしにだって昔はそういうの、ちゃんとあったのよ」

 

リカコ、ムキになって言い返す。

 

「これでもね、あたしがいっちばん具合の悪かったときに、ラブレターくれた男子がいたんだから。今でも忘れてないわよ、中学の同じクラスのハントケ・イグネイシアス・マルニュストリエーブルくんって子なんだけどね」