月夜に狩る人、喘ぐ人。-21

ハントケが何だって?」

「いや、だからね、ハントケ・イグネイシアス・マルニュストリエーブルくんがね」

「お嬢さん、お嬢さんのお名前はリカコさんでよろしいのかな?」

 

マーティン・レイノルズ教授、食堂の出入口ドアの向こうからひょっこり顔を出し、リカコにたずねる。リカコ、意表を突かれた様子で再び顔を赤らめる。

 

「あっ。ええ、はい。リカコなら私ですが」

「良かった!いや実はね、君にお客さんが来てるんだよリカコちゃん」

「お客さん?」

 

レイノルズ教授の後ろに青年がひとり立っている。青年はもじもじした様子で顔を覗かせる。

 

「こちらの青年なんだけどね。たまたま廊下ですれ違って、リカコさんはいらっしゃいますか?って。えっと君、確か名前はハントケ・イグネイシアス・マルルストリングエー…」

「マルニュストリエーブルです、」

サスキア4号くん?」

 

リカコ、我を忘れて席を立つ。ハーバート、怪訝な顔でリカコを見る。

 

「誰だよサスキア4号って」

エレナ王女?」

 

今度はハントケがリカコに向かって聞き慣れぬ名を呼ぶ。ハーバート、呆れ顔でハントケの口ぶりを真似て言う。

 

「おいおい、【エレナ王女】って!」

 

ハントケ、急ぎ足で食堂に入る。レイノルズ教授、笑顔でハーバートとリカコに言う。

 

「申し訳ない、次のメニューまで間が開いてしまったね。ゴブラー教授、君にはカツレツを用意したよ。それから【エレナ王女】、君にはキンと冷えた果物ジュースをね。もちろん、ハントケくんの分もね」

 

ハントケ・イグイネシアス、レイノルズ教授にポンポン肩を叩かれ赤面する。

 

「それじゃあ僕はこれで。揚げ芋食べに、奥さん待たせてるんだ。奥さんに怒られるとイヤなので、このへんで切り上げさせてもらうよ。また、あとでね」

 

マーティン・レイノルズ教授、右腕で大きく半円を描く。するとテーブルの上にはカツレツと果物ジュースのグラスがふたつ現れる。レイノルズ教授、安心した様子で笑顔でその場を去る。