月夜に狩る人、喘ぐ人。-22

リカコとハントケ、テーブルの隅へ移動する。椅子が1脚、ハントケの前に現れる。ハントケ、リカコのそばに座る。

 

「あの。ハントケくん。よくわからないけどこんな場所で、久しぶり」

「うん。僕も何が何だか全くわからないんだけど、お久しぶりだねリカコちゃん」

「さっきお前らが交わしていたあのおかしな名前は何なんだ?」

 

ハーバート、カツレツに食らいつきながらたずねる。

 

「ああ。私たち中学生の頃に、自作のお芝居っていうか、まあ、そんなもので遊んでいた時期があったの。ハントケくんと私だけじゃなくて、他の子たちも何人かいたんだけど。ね?」

「うん」

「エレナはともかくサスキア4号ってのはいったい何だ」

「それはまた別の機会に教えるわよ…、で、あのハントケくん、ハントケくんは元気?」

「ちっ。俺は後回しかよ」

「…うん。僕は元気。リカコちゃんは?」

「ご覧のとおり縞々のまんまですと言え」

ハーピーさん、うるさい」

 

ハーバート、ケッとひと言吐き捨て、カツレツの残りを片づける。

 

「おい次はサラダだ、マカロニサラダを山盛り持ってこい、」

 

すると真っ赤なカニがぷるぷる震えながら、横歩きでマカロニサラダを頭上に抱えて運んでくる。

 

「ご苦労!」

 

リカコ、サラダを食い散らかすハーバートを横目にハントケに答える。

 

「…そうね、正直言ってあのときからこれといった進歩もなくって感じかしらね…、」

「病院へは?」

「たまにね。それよりもハントケくん、今は何してるの?仕事は?」

 

ハントケ、伏し目がちに果物ジュースをすすりながら、途切れ途切れに答える。

 

「うん。ほらあの僕、実家が造園業でしょう。だから、高校出てから、普通に後継ぎに」

「ああ、そうだったね。ご実家にも綺麗なお庭あったしね。ご両親はお元気?」

「うん。おかげさまでね。あと、うん、その、奥さんも」

 

リカコ、一瞬表情が固まるも、その後声を振り絞って会話を続ける。

 

「そう。そうだったの。結婚したのね」

「うん」

「そりゃそうよね、あれから10何年も経ってるんだしね。やだあたし、何考えてたんだろ」

「仕事手伝ってくれてるんだ、奥さん。高校を卒業してから出会った人なんだけど」

「そう。支えになってくれる人がいて、良かった。あたしは高校出てしばらくは、その、入院とかしちゃってたから」

「うん。風の便りで聞いた。会いに行こうか迷ったけど、僕結局、やめた。お見舞い行かなくて、ごめんね」