月夜に狩る人、喘ぐ人。-24

ハントケ、グラスを置いて席を立ち、リカコに向かって静かに一礼する。リカコ、笑顔で黙って小さく右手を振る。

 

ハントケ、退場。

 

リカコ、ハントケの姿が消えていくのを黙って見守るも、彼が完全にいなくなるなりハーバートの足もとのバケツに突進する。

 

「バカお前、何やっとる!」

 

ハーバート、果物ジュースを吐き出すリカコに叱責の言葉を浴びせる。

 

「やめろ。やめんかこら!アイツの前で見せたあの笑顔は何だったんだ?」

 

リカコ、両手で青いバケツにしがみつき、ハーバートの言葉は無視してジュースを吐ききる。頭上の大きなリボンが床に垂れ下がる。赤いパンプスのヒールが邪魔をして、中途半端な姿勢のままバケツに顔を突っ込むリカコ。ハーバートはその肩を引っ掴み、彼女をバケツから引き離す。

 

「このド阿呆、」

 

ハーバート、自分のネクタイをほどき、脂汗のにじむリカコの顔から吐しゃ物を拭き取る。リカコ、床にへたり込む。

 

「お前がこの数時間でまともに飲み食いしたものといえば、せいぜい、お子様ランチの一部とあのジュースだけじゃねえか!それも、こうやって吐くためだけに飲み干したってか?お前は何か問題が持ち上がるたび、こうやって吐いてきたわけだな?」

 

リカコ、焦点の定まらぬ涙目で床をボンヤリ見つめたまま、小さく頷く。

 

「ド阿呆、このド阿呆が、」

 

ハーバート、リカコの隣で短い脚を放り出し、ドスンと音を立てて座り込む。