月夜に狩る人、喘ぐ人。-26

「…あたしにはちょっとまだ、理解できない。あなたとあたしは真逆よね。なぜあなたがこんなふうに食べ物を体に詰め込むのか、あたしから見たら、やっぱりそれ、異世界

「俺にも詳しい説明はできんが、」

 

ハーバート、首の周りを掻きむしる。ネクタイで締めつけ続けた部分が汗で痒い。 

 

「王によって洗脳された子どもたちを目の当たりにしてからというもの、こんなふうになっちまった。【取り込む】という意味では、俺も子どもたちも同じなんだがな」

「取り込むって?」

 

リカコ、頭上のリボンの重みに疲れて、リボンをほどく。栄養不良で艶のない金髪が、痩せこけた両頬にかかる。

 

「子どもたちはな、プロパガンダとして書き換えられた栄養素をそれと知らずに体内に取り込んだ。新たな律法文書の複製チップを埋め込まれたようなもんだ。各栄養素が体のすみずみにまで送られるなり、子どもたちは異語を話しだす。そのさまはまるでロボットだ。俺はそういう子どもたちの変容ぶりを見せつけられて、言ってみればショックでこうなった」

「あなた自身はそのおかしな栄養素で書き換えられることはなかったの?」

「それ以前に配給されていた食糧の残り、つまり自宅にあった備蓄分で飢えをしのいだ。怪しい栄養素だってことを嗅ぎつけたルボール市民は、俺ただひとりだったからな」

「その飢えが原因で今みたいになってるんじゃない?」

「それは俺にはわからん。ただ、子どもたちの姿を思い浮かべるたびに、俺は食いまくった。目に飛び込んだものはすべて詰め込んだ。雑草だって食ってやったさ」