「さあ。お前今、何が食いたい。俺は何でも構わんが、そうだな、生クリームたっぷりのケーキを丸ごと1ホールと、これまた脂肪分たっぷりのコーンポタージュと、コカコーラ2リットルでもいただくか。おい給仕!」
ハーバートの声を聞きつけ、1匹のニホンザルが顔を赤らめ急ぎ足で注文の品々を持ってくる。テーブルの上にメニューをすべて置くと、サルは白い前掛けで両手を拭き、ハーバートの前でぎこちなく立つ。
「そこで何を突っ立って待っているのだ、」
ハーバート、フォークをケーキに突き刺す。ニホンザル、頭をペコペコ上下に揺らしながら答える。
「…というのもですね、旦那、あっしはちと先立つものが足りませんでえへへへへ」
「チップなぞやらんわ!」
ハーバート、右のこぶしでテーブルをドンと叩く。
「ストライピーに、もとい、こちらの女の子にも飯を用意しろ」
「ハービーさん、あたしはお腹空いてないから…」
「ダメだ。お前も俺と一緒に食え。さあ、何がいい?ポップコーンはどうだ?チーズバーガーもあるぞ?何ならホウレンソウだのダイコンだの、菜っぱひと口でもいいんだぞ?お前が今食いたいものを言え」
リカコ、泣き出す。ニホンザル、リカコの姿を見てソワソワしだす。
「あたし、怖い。ダメ。無理。あたしがバラバラになってなくなっちゃう。ちゃんと数字を綺麗に並べなくちゃダメなの、ちゃんと並べて積み重ねて、綺麗に整列させて、安心しないとダメなの。さっきほんの少しだけ食べたお子様ランチのハンバーグもジュースも、あたしの中をゴッチャゴチャにしたの。ねえハービーさん、あたしダメなの。やっていけないの。だから食べ物の代わりに時限爆弾でも詰め込んでくれない?そしたらあたし、お婆ちゃんの代わりに消えることができるーーー」