月夜に狩る人、喘ぐ人。-28

「さあ。お前今、何が食いたい。俺は何でも構わんが、そうだな、生クリームたっぷりのケーキを丸ごと1ホールと、これまた脂肪分たっぷりのコーンポタージュと、コカコーラ2リットルでもいただくか。おい給仕!」

 

ハーバートの声を聞きつけ、1匹のニホンザルが顔を赤らめ急ぎ足で注文の品々を持ってくる。テーブルの上にメニューをすべて置くと、サルは白い前掛けで両手を拭き、ハーバートの前でぎこちなく立つ。

 

「そこで何を突っ立って待っているのだ、」

 

ハーバート、フォークをケーキに突き刺す。ニホンザル、頭をペコペコ上下に揺らしながら答える。

 

「…というのもですね、旦那、あっしはちと先立つものが足りませんでえへへへへ」

「チップなぞやらんわ!」

 

ハーバート、右のこぶしでテーブルをドンと叩く。

 

「ストライピーに、もとい、こちらの女の子にも飯を用意しろ」

「ハービーさん、あたしはお腹空いてないから…」

「ダメだ。お前も俺と一緒に食え。さあ、何がいい?ポップコーンはどうだ?チーズバーガーもあるぞ?何ならホウレンソウだのダイコンだの、菜っぱひと口でもいいんだぞ?お前が今食いたいものを言え」

 

リカコ、泣き出す。ニホンザル、リカコの姿を見てソワソワしだす。

 

「あたし、怖い。ダメ。無理。あたしがバラバラになってなくなっちゃう。ちゃんと数字を綺麗に並べなくちゃダメなの、ちゃんと並べて積み重ねて、綺麗に整列させて、安心しないとダメなの。さっきほんの少しだけ食べたお子様ランチのハンバーグもジュースも、あたしの中をゴッチャゴチャにしたの。ねえハービーさん、あたしダメなの。やっていけないの。だから食べ物の代わりに時限爆弾でも詰め込んでくれない?そしたらあたし、お婆ちゃんの代わりに消えることができるーーー」