「神父さま!私は罪を犯してしまいました」
「どのような罪ですか」
「はい。また道に迷ってしまいました」
「ほう。また、ですか」
「ええ…、私は太りすぎで医者から食事制限を言い渡されているのですが、ここへ来る途中、茶飲み友達に誘われて、どうにも断れず」
「それで今日は何を召し上がりました」
「はい。ザッハトルテと、きのことベーコンのキッシュを」
「美味しかったですか」
「ええ、それはもう」
「ならば神はお赦しになるでしょう。ご心配なく。次の方」
「ああ、もう。神父さま、俺としたことが」
「どうされましたか」
「俺、とうとう父親の背丈を超えてしまいまして」
「ああ。それはそれは親孝行な」
「親孝行なンすか?」
「もちろんです。神さまも喜んでおられます。よって心配はいりません。次の方」
「神父さま。私の本名はリサと申します。私はとんでもない罪を犯してしまいました」「リサさんですね。とんでもない罪とは、どのような罪ですか」
「…ごめんなさい。恥ずかしくて、やっぱり言えません」
「無理強いはしませんが、ここまでいらしたのですから。話せることだけでも」
「……まさかこんなことを申し上げることになるとは……、あの、私、ここの神父さまに恋をしてしまいました」
「ほう。それはそれは。それで、もしよろしければ、その神父の…」
「あなた様です、フェオファン神父さま」
「即答いたします。あなたは即刻、神の祝福をお受けになります。もはや心配するに及びません」
「赦していただけるのですか?神さまにも、神父さま、あなた様にも」
「リサさん。あなたは罪を犯しておられません。ああ、先ほどの道に迷ったという方、ちょっとこちらへ」
「はい、何でしょう?」
「確か先ほど、ここへ来る途中でトルテとキッシュを召し上がったと」
「ええ、確かに」
「しかも美味しかったとおっしゃっていましたね」
「ええ、そりゃあもう!それでまた私、肥え…」
「そこまでで結構。大変、参考になりました。どうぞご退場ください。それではリサさん、」
「…はい」
「今日のこの痛悔機密が終わりましたら、デートしましょう」
「えっ。本当に?」
「ええ。本当です。ザッハトルテときのことベーコンのキッシュを、私とふたりで山ほど平らげましょう。リサさん、神が今、何とおっしゃっているか、あなたにおわかりですか」
「ええっと……、」
「『喜べ。喜びなさい』です。私もあなたのご好意、喜んでお受けいたしますよ。おめでとう、私の愛らしい恋人!」