あなたも知ってる若者たちさ!-3

奇留家と真理亜、講堂を出る。奇留家は黒猫の吉田くんを腕に抱えている。


「あれ、首輪についてる鈴。ちょっとここ、糸が緩んでるな。外れなければいいけど」


「ねえ剛(ごう)兄ちゃん。その子、野良猫でしょ。汚くないの」


「僕は君の兄ちゃんではない。吉田くんも汚くはない。吉田くんに失礼なことを言わないように」


奇留家はズボンのポケットからくしゃくしゃのハンカチを取り出し、吉田くんの額と鼻を拭いてやる。真理亜、吉田くんの顔に自分の顔を近づけ、くんくんとにおいをかぐ。


「まあ、臭くはないわねこの子」


「臭いわけがない。パートタイムの飼い主がいるのだから」


「え?誰」


「君は知らないだろうけど。機械工学部の灰出河(はいでが)教授が面倒を見てくださってる。ああ、噂をすれば!」


奇留家と真理亜の数メートル先、大学の中庭で、灰出河教授とひとりの青年が機械いじりをしている。真理亜は青年の姿を見るなり、踵を返してどこかへ逃げようとする。奇留家、不思議そうに真理亜に声をかける。


「どうした、ジンベエザメ


「今ここでそのあだ名はやめて!ちょっと、こっち来て」


真理亜、奇留家に手招きする。


「なんだよ」


真理亜、急にひそひそ声になる。時折その視線は灰出河教授の隣にいる青年に向けられている。


「あの人よあの人、」


「え?」


奇留家、吉田くんの頭を撫でながら、わずかばかり青年のほうを見る。小柄な真理亜はつま先立ちして、長身の奇留家に耳打ちする。


グルテンフリーでサステナブルな生活を営む男。私を餃子大食い大会のパートナーに選んだ男。家巣拓海(たくみ)よ!」